
<アンドリュー・ワイエス 創造への道程>を見にBunkamura ザ・ミュージアムへ。
この間は<オフィーリア>好きなくせに<ミレイ展>へは腰がなんだか重くて結局行かず…。でもずっと迷って行かないで終わったせいか、なんだかリアルな絵を見たくなっていてワイエスに惹かれて行ってきました。
あまりワイエスについて知らず、「水彩画」「リアル」「クリスティーナの世界」くらいの予備知識。
展示は<創造への道程>というサブタイトルが付いているだけあって、素描・習作がメイン。中にはそこから完成された作品の実物も何点か見る事が出来ました。でもこの水彩画の習作がやっぱりすごい。ひとつの作品を完成させるまでに今回展示されてたものでも最低2枚以上の習作を描いてから本番に取りかかっています。習作は水彩で結構ざっくり大きく塗ってるものも多かったけど、それにしても毎作品こんなに習作を重ねていて尚この作品量。仕事で挿絵画家をしていたようなのでそれを考えたら量は必然的に多くはなるだろうけど、更に習作を加えたらいったいどれだけ紙が積み重なっていくのか!
どうもお父さんは売れっ子の挿絵画家だったらしく、実家はとても広くて大きかったので場所には困った事ないんだろうなぁ。
作品は素朴な田舎の風景や暮らしを好んでいたようで、派手なモチーフはないものの説得力がありました。でもザザッと描いたものも絵になってるのだけど。リアルを追究して、ドライブラッシュという水分を少なく・絵の具は少量、という技法を多用して石の質感や物の錆感、あと光の反射を表現しているのが特徴でした。こういうリアルな絵はコントラストが大事で、白を白に見せるには色を塗らないほうが良いのですが…きっちりビシッと白を抜いて描いていて、頭の中で整理して描いてるんだろうなぁってデッサンの重要性を感じました。
展示のわりと最初の段階で有名な<クリスティーヌの世界>の素描と習作があり、ずっと知らなかったその作品の状況と意味を知りました。これまで私は単に、風の吹く草原(少し坂になってる)の下のほうから走ってきて転んだか疲れたかした女の人がもうちょっと!って思ってるか、または誰かを追いかけたか…と漠然としたイメージを持っていて、いつもなんだか矛盾しているようで不思議ではあったけどそれ以外深くは考えた事がなく…。
そしたら実際の状況はモデルとなったクリスティーナは足が不自由でいつもあんな風に足を投出し、腕で這って歩いていた人だったらしい。「野菜をとりに畑へ行って、自宅へ戻る」その途中を絵にした作品でした。遠い。家遠い。ワイエスはその姿に生きる力強さを感じて絵にしたらしい。
作品に一貫して生命があった場所というのを大切に感じているようです。
展示の途中では孫をインタビュアーにしたビデオが流れていて、「一週間に7日描く重要性」を話しており、これまた頭があがりません。(当然だ)91歳になった今も、素描から始まり日々身近な物や景色、人の姿を追究しているんだろうな。
ワイエスのエネルギッシュな展示のせいで早く何か描きたくなって、その後行った工房でいつもなら次回に回す時間帯で版画の刷りに挑戦してしまった!時間いっぱい+アルファかかり刷り上がった作品に珍しく満足しました。すごい紙のレイアウト悪かったケド。今やってる作品になんとなく今日見たワイエスと共感出来るイメージを込めていたからかもしれない。
全く話しは変わるけど、ワイエスのモノクロのポートレイトが格好良すぎ…!素敵。私もいつかあんな風に格好よく撮ってもらいたーい。なんて。
*画像は<火打ち石>の一部。
投稿者 orangeworks : November 14, 2008 11:48 PM